kisakishoesの日記

注文靴と靴教室 キサキシューズ

その2。



photo:yoko asakai

いつも自転車で工房に向かいます。
最近は昼間は暖かくて丁度心地よい通勤タイムですが、帰るときにちょっと面倒な気持ちに。
12時前には帰るようにしていますが、毎日ついつい工房に長居してしまいます。
寒いのいやだなー、と思いつつ首にぐるぐるマフラーを巻いて、走り出してからもしばらくは肩をちぢめて、、、、、
でも家に帰る頃には程よく身体が暖まって気分も良くなってくるから、そこからさて、、、一杯。
早く寝ればいいのに、上手い具合にスイッチ切り替えが出来てしまい、結局夜中にもぞもぞもぞもぞ。。。
分かっちゃいるけどやめられない。これが楽しいのです。

何故、人は深夜になると自分の世界が何倍にも広がる気分になるのでしょうか、
びよ〜ん、、と音が聞こえるくらいに色んな感覚のスイッチや記憶のスイッチがオンになって拡張して、
本棚をあさったり、昔のノートをひっくりかえしてみたり、youtubeでこっそりライブ気分を満喫したり。

最近友人が、工房にプリンを届けてくれました。
アムプリンという北海道のプリン屋さんのプリンなのですが、ずーっと気になってたものだったから、
食べる時にちょっとドキドキ、、、、というのも、今まで勝手に膨らんでいた期待が裏切られたらどうしよう、
自分好みでなかったらどうしよう、というこれまた好意が入り組んだ故の感情なのですが、
実際たべてみたら、まったくそんな心配をする必要の無い、大好きな味でした。
そもそもは高山なおみさんという料理家の方のエッセイ本の中で出て来たプリン、
それはプリンそのものの紹介ではなく、日々の事柄のやり取りの中にそのプリンを作っているご夫婦が出てきて、
一体この人たちが作るプリンってどんなのだろう?と興味をもったのでした。
食べてみて納得、素材も優しくきちんとした味、奇をてらわずでも個性的。。。
食べ物ってものすごく作ってる人が直結するな、と改めて思った。
たったプリンひとつで、色んな事を考えたり感じたりするきっかけになって、それはそれは嬉しい
「プリンタイム」になりまして。

自分がいいなと感じたものに対するアプローチの仕方で思い出したのが、
今回のプリンに限らず、これいいな、というものがあった時にそれについて感じたり考えたりする事で忙しくなって
世界が妄想で増殖していく、、、、その世界が膨れ上がって逆にホンモノに触れるのがこわくなる。。。
という困った傾向がある事に気がつきまして。
一時期、映画や音楽やなんやかんやでフランス=パリ、に憧れていたとき、
本当にパリに初めて行った時、嬉しさと同時にどこかでそれはやはりこわかった。
私の中の完璧なパリがもし壊れたら、、、、!?でも実際は思ってたよりもっと素敵で楽しくて何のためらいも無く大好きな場所になった。
なんだ、私合ってたじゃん、っていう。
好きなものの入り口に立った時、いや、好きそうなものの入り口に立った時、
その先にある世界がどこまで広がっているか、深まって行くか、実際に触れて知る喜びもあるし、
少し離れた所から、そのカタチをなぞるように自分の中で熟成させる喜びもある。

テンポや距離感は人それぞれだけど、それは時期がくれば、どっちにしろより直接関わることになるものの話だから、
その為には好きなものはちゃんと好きでいないとな。そのすきなものの欠片たちを集めた別の「もうひとつの世界」が
わたしの居場所だからな、、、。で、今宵ももぞもぞ、、、、。
そのもうひとつの世界が、たぶん私の作る世界になっていくだろうなー、
今年の個展では、その小さな種が撒かれたような気がしています。

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